加熱式たばこ及び電子たばこ製品の蒸気が歯科審美性に及ぼす影響
-In vitro研究結果

この論文は弊社が日本歯科審美学会第32回学術大会でポスター発表(英語)いたしました。本トピックスはそのポスターの日本語訳です。

In vitro results of the impact of heated tobacco and electronic vapor product aerosols on dental esthetics

Filippo Zanetti1(presenter), Xiaoyi Zhao2,3, Shoaib Majeed1, Nikolai V. Ivanov1, Manuel C. Peitsch1, Yanfang Ren2, Julia Hoeng1
  1. 1. PMI R&D, Philip Morris Products S.A., Quai Jeanrenaud 5, CH-2000 Neuchâtel, Switzerland
  2. 2. University of Rochester Eastman Institute for Oral Health, Rochester, New York
  3. 3. Peking University School of Stomatology, Beijing, China

要点

  • THSは、たばこ葉を燃焼させる代わりに加熱する加熱式たばこ製品であり、これにより、標準たばこからの煙と比較して、有害および有害性成分のレベルを平均で90%以上削減する。
  • P4M3は、MESHTMテクノロジーを使用した革新的な電子たばこ製品。
  • 紙巻たばこの煙とは異なり、どちらの非燃焼製品から生成される蒸気は、12/15日間の曝露後の歯科組織およびコンポジットレジンの色の安定性への影響が最小限であった。
  • 歯とコンポジットレジンの変色に対するTHSの蒸気の影響は、紙巻たばこの煙より3〜9倍低かった。
  • P4M3蒸気の歯科組織およびコンポジットレジンの変色への影響は、タバコの煙の4〜8倍、赤ワインの5〜18倍、ブラックコーヒーの1.5〜8倍低かった。
  • P4M3の蒸気の曝露による最小限の変色は、ホワイトニング歯磨き粉で歯磨きすることで完全に元に戻すことができる。

背景および目的

たばこの喫煙は歯の変色の危険因子の一つである。紙巻たばこの燃焼で発生する粒子相に含まれる色素は、歯の硬組織や歯科治療用材料の変色を及ぼす可能性がある。それに比べ、電子たばこや加熱式たばこで発生する蒸気は、たばこ喫煙における歯の変色を抑えられると考えられる。本研究では、電子たばこ及び加熱式たばこ(P4M3、Tobacco Heating System[THS]:Philip Morris International)から発生する蒸気が、紙巻たばこから発生する煙と比較して、歯質やコンポジットレジンの変色を抑えられるかどうかを検討するため、2つの実験を行った。

材料および方法

ヒト小臼歯をローチェスター大学イーストマン口腔衛生研究所の口腔外科クリニックで採取し、コンポジットレジン(Filtek™ Supreme Ultra[3M ESPE])を用いて修復した。歯の色の測定には歯科用分光光度計(Olympus CrystalEye®)を使用し、国際照明委員会 L*a*b*(CIE Lab色空間)を用いて評価した。

実験1.曝露実験装置(Vitrocell® 24/48 [Vitrocell Systems GmbH]]を用いて、歯(n = 11)を不希釈の実験用標準たばこの煙(University of Kentucky)、もしくはTHSの蒸気に1日20本/スティック、週4日、3週間曝露した。標準的な歯ブラシと一般的な歯磨き粉を用いて、曝露した歯を毎週磨いた。

実験2.歯(n = 10)を曝露実験装置(Vitrocell® 24/48)を用いて、実験用標準たばこの煙またはP4M3蒸気、2mlのコーヒー、赤ワイン、醤油にそれぞれ56分間、3週間の間に15日間曝露した。56分間の曝露後、標準的な歯ブラシと一般的な歯磨き粉を用いて、曝露した歯を磨き、曝露期間終了後、ホワイトニング治療を行った。

ホワイトニング治療(実験2のみ)を6%の過酸化水素水(H2O2、Beyond Core White, Beyond International Inc.)を用い、1日30分間8日間行い、さらに35%のH2O2(Beyond Max 5, Beyond International Inc.)を用いて30分間、2回施行した。紙巻たばことP4M3群のみ専用処理として、一般消費者向けのホワイトニング用歯磨き粉(Crest 3D White, Proctor & Gamble)を用いた。それぞれの歯を200gの圧力をかけて週140回、3週間磨いた。全ての統計解析では、両側検定、有意水準0.05を使用し、ボンフェローニ法を用い多重比較による検出力の低下を補正した。

実験結果1

紙巻たばこの煙曝露12日後に、エナメル質と象牙質に顕著な変色が認められ、コンポジットレジンによる修復箇所と歯硬組織にも色差が認められた。THSの蒸気曝露12日後では、エナメル質、象牙質、コンポジットレジン修復箇所の変色は殆どなく、色差も認められなかった。

実験結果2

(A) エナメル質、象牙質、コンポジットレジンの修復箇所での変色結果を示すと、変色の強かった順で、赤ワイン、紙巻たばこの煙、醤油、P4M3の蒸気であった。エナメル質とコンポジットレジンの修復箇所での色差が認められたのは、赤ワインと紙巻たばこの煙に暴露された歯のみであった。一般的な歯磨き粉を使用した毎日の歯磨きで、特に紙巻たばこの煙と醤油に曝露された歯であっても、歯の表面の色素沈着を大部分除去できた。

(B) 6%のH2O2でのホワイトニング治療後、P4M3の蒸気曝露群では、エナメル質、象牙質、コンポジットレジンの修復箇所の変色を元の色合いまで戻すことができたが、紙巻たばこの煙、コーヒー、赤ワイン、醬油での曝露群では、完全に着色除去できなかった。35%のH2O2でのホワイトニング治療後では、コーヒーと醤油曝露群では、変色を完全に元に戻すことができたが、紙巻たばこの煙と赤ワイン曝露群では、着色の減少が認められただけであった。

(C) ホワイトニング用歯磨き粉を使用した歯磨きでは、紙巻たばこの煙曝露群での着色を顕著に減少できたが、エナメル質、象牙質、コンポジットレジンの修復箇所でのΔEは、しきい値の3.3を超えており、臨床的に顕著な変色を示していた。P4M3群では、3週間の歯磨き後の色彩値は、ベースライン値と同等であった。

(A)
(B)
(C)

結論

  • THSの蒸気によるエナメル質、象牙質、コンポジットレジンの変色は、3R4F紙巻たばこの煙による変色よりはるかに少なかった。
  • 定期的な歯磨きは、エナメル質、象牙質、コンポジットレジンの修復箇所などの歯硬組織・修復用素材において、様々なものによる曝露後の結果に影響することが分かった。
  • 赤ワインと紙巻たばこの煙は顕著な歯の変色を引き起こし、エナメル質とコンポジットレジンの修復箇所での色差も認められたが、ホワイトニング治療では、元の色合いまで戻すことはできなかった。
  • P4M3の蒸気の曝露による歯の変色はごくわずかでホワイトニング用歯磨き粉での歯磨きで完全に元に戻すことができた。

The research described in this poster was sponsored by Philip Morris International.

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